2010年9月13日月曜日

「ダンス・ダンス・ダンス」村上春樹

村上春樹は「僕のガールフレンド」と書く。
「僕の彼女」とか「恋人」とかではない。
「ガールフレンド」というのがいかにも彼らしい特別な響きをあらわしていて
好いな、と思う。

彼の表現は本当に多彩で、魅力的だ。
面白い比喩。


音楽が消えるとあたりは眠り込んでしまいそうなくらい静かだった。
ときどき芝刈り機のうううううんんんんという唸りが聞こえた。
誰かが誰かを大声で呼んだ。風鈴がからからと小さな音で鳴った。鳥も啼いた。
でも静けさは圧倒的だった。
何か音がしてもそれはあっという間に痕跡ひとつ残さず静けさの中に吸い込まれてしまった。
家の回りに何千人もの透明な沈黙男がいて、透明な無音掃除機でかたっぱしから
音を吸い取っているような気がした。
ちょっと音がするとみんなでそこに飛んでいって音を消してしまうのだ。






「すごく元気そうに見えるよ。日焼けがたまらなく魅力的だ。
まるでカフェ・オ・レの精みたいに見える。
背中にかっこいい羽をつけて、スプーンを肩に担ぐと似合いそうだよ。
カフェ・オ・レの精。君がカフェ・オ・レの味方になったら、
モカとブラジルとコロンビアとキリマンジャロがたばになってかかってきても絶対にかなわない。
世界中の人間がこぞってカフェ・オ・レを飲む。
世界中がカフェ・オ・レの精に魅了される。君の日焼けはそれくら魅力的だ」






映画は当然過ぎるほど当然な筋を辿って凡庸に進展していった。
台詞も凡庸なら、音楽も凡庸だった。
タイム・カプセルに入れて「凡庸」というラベルを貼って土に埋めてしまいたいくらいのものだった。



いいね。すごくいい。
ふふりと笑ってしまう。
表現力豊かだ。

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