2010年2月10日水曜日

新しい答えの見つけ方

2010-41

大手ショールームに勤務していた頃、接客のあらゆる応対に
「これでもか」というほどマニュアルがあった。
ふさわしい言葉遣い、気持ちの込め方、姿勢、最適な笑顔、
お辞儀の深さや「○○はあちらです」というご案内時の腕の角度まで、
徹底的にルール化されていた。
最初こそ驚き、このまま自分はマニュアル人間になるのかと戸惑いを覚えたけれど、
そんな場所で働いて半年も経てばそれが普通になり
「マニュアル人間」と「マニュアルを使いこなす人間」の違いにも気づいた。

お客様からの問い合わせにはある一定の傾向があって
よく聞かれる質問もある。ほとんどの場合暗記して答える。
逆にめったに聞かれない上、調べてもすぐに答えが見つからないような質問もあった。
調べるのに30分、1時間、2~3日かかるような場合もある。
そういった質問について苦労しながらも答えた場合は、
後日スタッフが独自に作成したQ&A集に質問と答えを載せていた。
次に同じような質問を受けたときのために、一度誰かが調べたことは皆で共有しておくのだ。

そういう質問と答えを頭の中に蓄積する癖は私に自然に身に付いたようで
ショールームを離れた後も、
自分の知っていることについて誰かが困ったり知りたがったりしている時は
自分の頭の中にあるQ&A集から答えるようにしていた。
もちろん親切心から。

こないだ、ある人が疑問を口にしていてそれに対して答えた。
なぜすぐに答えが出たかというと、
少し前に自分が同じ疑問を抱き、上の人に質問をしていたからだ。

私の答えに、彼女は不服そうに言った。
「あなたの答えは聞いてないのよ。自分で勝手に判断するのではなくて、
小さなことでも上の人に確認する癖をつけたほうがいいわよ」と。

勝手な判断もなにも、私もまったく同じ質問をして得た回答を教えただけなのに!

と憤然としたが、その気持ちはとっさに飲み込んだ。
私が質問したのは1ヶ月ほど前で、その人が質問したのは今日。
つまり、時差があったからだ。

質問の性質上、たった1ヶ月で答えが変わるようなものではない。
ただ、私がいけなかったのはその人の質問を聞きながら
(ああ、その質問はすでに私が聞いて答えがでている)
と内心思っていたこと。
その質問は、脳内にあるQ&A集の1ヶ月前のページに載っている。


質問した人の気持ちや質問に至る動機に考えを及ばせられず
たまたまではあるが、知っていたから答える、という私の態度は
マニュアル人間そのものではないかと反省した。
その人の疑問は「今」なんだ。
だから「過去にこんな答えが出てますよ」ではなくて
一緒に「今」の問題としてとらえていかなければいけない。
過去に出した答えも、新たに何度でも塗り替えられる。
「組織は、生きているんだ」と改めて気づかされた。


反省しながらも、大げさに言えば、これは「現代病」ではないかと思った。

ショールームで身につけた職業病や私の性分という問題だけではなく
私は日々の生活の中で「即座に答えを見つける」ということに慣れすぎている。
検索して答えを見つけるサイクルを一日に何回も繰り返しているからだ。
それを他人に押し付けていたのかもしれない。

答えは必ずしもすぐに出せばいいってものじゃない。

「一緒に、そして新たに、考える」
こういうスタンスも人と人との間では必要なんだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿