2010年8月21日土曜日

不運

昨日、2時間の残業を片付けて会社を出た。
外は蒸し暑かった。
あいにく電車はすぐ来なかった。
5分の待ち時間の間に首筋から汗がにじんできた。
この汗も電車に乗ればひんやり気持ち良いだろうと想像した。
電車は空いていた。
乗り込む瞬間の冷気を思う存分体に浴びた。
ドアの近くの座席だけぽっかり空いていた。
ラッキーと思って座った。
ああ、涼しいなあと思いながら読みかけの文庫本を開いた。
それにしても涼しいなぁ、とくにお尻がひんやりして気持ちいいと思った。
次第にお尻が涼しすぎると感じてきた。
まさかと思って座席とお尻の間に指を差し込んでみた。
その瞬間わたしはギャーと飛びのいた。
立ったまま人目を気にして遠慮がちに自分のお尻に手を当ててみた。
お尻は濡れていた。
座席もよく見ると少し色が濃くなっていて濡れているようだった。

理解不能のまま他の座席を見つけて座った。
もう一度お尻を指先で触ってみた。
触った指を嗅いでみた。
うっ!くっ・・・臭い!なに?何の液体なの?!とパニックになった。
次ぎの駅について一番初めに乗り込んできた男性が先ほどの席に座った。
15秒くらいして彼も座席とお尻の間に手を差し込み、同じく飛びのいた。
そして隣の車両に移ってしまった。

降車駅で降りたあと乗り換えのために歩いていると
お尻が濡れていて非常に気持ち悪かった。
誰があんなところでおしっこをしたのかとムカついた。
濡れているお尻の感触がベタベタして嫌な気持ちになった。
お尻が濡れていて、しかもおしっこ臭いとすると
むしろ知らない人が見たら、わたしがおしっこを漏らしたみたいに思われるんじゃないかと恐れた。
憤ってみるが誰に向けて怒ったらいいのかわからなかった。

無気力になりながら帰ってきた。
被害者を増やさないための回避方法を考えていたが見つからなかった。
誰かが座ろうとするたびに「ここは濡れていて座れませんよ」と
いちいち注意することもできないと思った。

犯人は誰なのかも考えた。
子供、大人、奇人、変人、悪人、廃人。
だがわからなかった。

うんこを踏んだときは運がついたね、なんて冗談も言えるけど
おしっこのときはどうしたらいいのだ。
運じゃない、つまり不運。
もしくは悲(非)運。運に非ず。


我ながら馬鹿馬鹿しいと反省した。

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