昨日出会った女の子はメガネをかけたほっそりとした色白の高校生だった。
「学校の教科でなにが好き?」
「世界史です」
わたしも大好きだった。
「世界史のどの時代が好き?」
「どの時代っていうか・・・まだそんなに習ってないんだけどイギリスが好きなんです」
イギリス。産業革命。
工場の油のにおいと機械の轟音が頭をよぎる。
「わたし、イギリスが好きだから将来イギリス人と結婚したいんです。
でも英語が苦手で。だから今から英語をなんとかしないといけないんです」
そうか、結婚か。産業革命の話はやめておこう。
「そうだね、旦那さんと会話できなきゃ結婚生活はうまくいかないだろうね」
「ですよねー。英語勉強しなきゃなぁ・・・」
そう言って彼女は憂鬱そうに食べかけのクッキーを口に運んだ。
結婚も将来の夢のひとつ、か。
わたしにもそういう時代があったな。
いつから現実のもの(実現可能かどうかは別として)になったのか。
道を歩いていたらある場所で放置自転車監視員みたいな制服を着た男から唐突に宣言される。
「はい、貴女はもう現実世界に入ってしまってますからね。ここまでの通行料を徴収します」
「えっ、これ有料道路だったの?どこから?境界線なんて見当たらなかったけど」
「ずいぶん前に跨いでしまいましたよ、大股でね。だいたい貴女は歩くのが早いから」
「そうだったんだ、いつ跨いだか思い出せないや・・・」
「人は気がつかないうちに大人になってる。しいて言えばクレジットカードを使い出したあたりから」
なんだか騙されたような気分。
「ともかく通行料、分割で払います」
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